「扶養」という言葉、ママなら一度は耳にしたり考えたことがあるかもしれません。
しかし、なんとなく知っていても実はよく分からない…そんなママも多いのではないでしょうか?
私自身も、2人目の妊娠を機に退職し、夫の扶養に入るまで、扶養の知識はゼロでした。
この記事では、私と同じようなママに向けて、扶養の基本を分かりやすく解説していきます!

家族の生活を支える大切な制度なので、一緒に理解していきましょう!
- 扶養の基礎知識
- 扶養に入ることのメリット・デメリット
この情報は2025年2月時点のものです。
2025年4月には制度改正が予定されています。最新の情報をご確認ください。
扶養とは
扶養とは収入がない、または少ない家族や親族に対して、経済的な援助を行うことです。
扶養には大きく分けて、以下の2種類があります。
- 税法上の扶養
- 税金に関する控除が受けられる
- 社会保険上の扶養
- 社会保険に扶養として加入できる



それぞれ解説していきます!
税法上の扶養
税法上の扶養とは、所得税や住民税の負担を軽減できる制度です。
納税者の配偶者、子ども、親などの年間合計所得金額が48万円以下(給与収入の場合は年間103万円以下)の場合に、一定額の所得控除が受けられます。



大まかに言うと一定の条件を満たす家族を、養っている人の税金が安くなる制度です!
子どもや親は《扶養控除》配偶者は《配偶者控除》の対象となり、納税者の負担が軽減されます。
それぞれについて後ほど詳しく解説します。



まず税金はどのように計算されるのか解説していきます!
所得税と住民税は「課税所得」というものに税率をかけて計算します。
下の図を参考にしてください。


収入
会社員:給与や賞与の合計額(年収)です。手取り額ではなく総支給額で、源泉徴収税額や社会保険料などが差し引かれる前の額のことをいいます。
個人事業主:事業による売上金額がそのまま収入金額です。
所得
会社員:収入から給与所得控除を差し引いたもの。給与所得控除は、収入に応じて決められています。
個人事業主:収入から必要経費を差し引いたもの。



必要経費とは、収入を得るために発生した支出のことです。
例えば家賃や光熱費、人件費などがあります。
課税所得
所得から、扶養控除や配偶者控除、医療費控除など各自の事情に応じて所得控除を行い、残った分が課税所得となります。
所得控除には15種類あります。



つまり所得控除を受け、課税所得を下げることが節税の基本となります!
控除は年に1回、扶養者が年末調整や確定申告で申告することにより受けることができます。
《扶養控除》や《配偶者控除》を受けるためには条件がありますのでそれぞれ解説していきます。
扶養控除
納税者に控除対象扶養親族(子どもや親、親族など)がいる場合に、一定の金額の所得控除が受けられます。
控除の対象となるのは、その年の12月31日時点で16歳以上の扶養親族です。
16歳未満の扶養親族は児童手当の対象となるため、扶養控除の対象外となります。
扶養親族
扶養親族とは、その年の12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
※引用 国税庁「No.1180 扶養控除」



扶養する(支える)人を『扶養者』
扶養される(支えられる)人を『被扶養者』と呼びます。
給与収入の場合、「給与所得控除」として55万円が所得から控除されるため、所得が48万円となるのは給与収入が103万円の場合です。
被扶養者の年間の合計所得金額が48万円または給与収入が103万円を超えると、扶養控除の対象から外れます。
扶養者は扶養控除を受けられなくなり、被扶養者本人も所得税を納める必要があります。



これが一般的に「103万円の壁」と呼ばれるものですね!
扶養控除の金額
扶養親族の年齢によって異なります。
- 一般の控除対象扶養親族
(扶養親族で16歳以上):38万円 - 特定扶養親族
(扶養親族で19歳以上23歳未満):63万円 - 老人扶養親族
(扶養親族で70歳以上):48万円または58万円
※同居老親等の場合は58万円、それ以外は48万円
配偶者控除
納税者に控除対象配偶者がいる場合に、一定の金額の所得控除が受けら受けられる制度です。
ただし、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられません。
控除対象配偶者
その年の12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。
- 民法の規定による配偶者であること。(内縁関係の人は該当しません)
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
※引用 国税庁「No.1191 配偶者控除」
被扶養者(配偶者)の年間の合計所得金額が48万円または給与収入が103万円を超えると、配偶者控除の対象から外れます。
ただし、配偶者控除の対象から外れても所得金額に応じて《配偶者特別控除》が受けられます。



たとえば私が夫の扶養に入り働く場合、給与収入が103万を超えないように調整すれば、私は所得税を支払う必要がなく、夫も控除が受けられるということですね!
配偶者控除の金額
納税者本人の合計所得金額によって異なります。
納税者本人の合計所得金額 | 一般の控除 対象配偶者の控除額 | 老人控除 対象配偶者の控除額 |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
※老人控除対象配偶者とは12月31日現在の年齢が70歳以上の人のことです。
配偶者特別控除
配偶者に48万円を超える所得(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)があり、配偶者控除が受けられない場合に、配偶者の所得金額に応じて一定の金額の所得控除が受けられます。



つまり配偶者控除の対象から外れても、控除額が一気にゼロになるわけではなく、段階的に減っていくということです。
配偶者特別控除を受ける条件
- 控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること。
- 配偶者が、次の要件すべてに当てはまること。
- 民法の規定による配偶者であること
(内縁関係の人は該当しません)。 - 控除を受ける人と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円超133万円以下であること。
- その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
- 民法の規定による配偶者であること
- 配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと。
- 配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書または従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと。
(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く。) - 配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと。
(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く。)
※引用 国税庁「No.1195 配偶者特別控除」



配偶者特別控除は夫婦でどちらか一方しか受けられません。
配偶者特別控除の金額
配偶者の所得金額に応じて段階的に減っていき、133万円を超えると控除はなくなります。
納税者本人の合計所得金額 | ||||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 | ||
配 偶 者 の 合 計 所 得 金 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養とは、一定の条件を満たす家族を被扶養者として、社会保険(健康保険や厚生年金保険)に加入させる制度です。
被扶養者は、保険料を自分で支払う必要はなく、扶養者の保険制度を利用できます。
国民健康保険には、扶養という制度はありません。国民健康保険は世帯ごとに加入し、世帯主が保険料を支払うため、家族もその世帯の一員として保険に加入するという形になります。
社会保険とは、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の総称です。
扶養の制度があるのは、主に健康保険と厚生年金保険です。
それぞれの制度について、詳しく解説していきます。
健康保険
健康保険は会社員や公務員などが加入する公的医療保険です。
公的医療保険には3種類あります。
- 健康保険(会社員・公務員)
- 国民健康保険(個人事業主など)
- 後期高齢者医療制度(75歳以上の人)
医療保険に加入し、保険証を持っていれば医療機関を受診した際の窓口負担が、かかった医療費の一部で済みます。



子どもの頃は扶養されていたので、保険料を自分で支払わなくても健康保険証を持ち、療養の給付を受けられましたよね!
被扶養者として認定されるには、収入の基準と被扶養者の範囲を満たしていることが条件となります。
※健康保険の運営主体には協会けんぽと健康保険組合、共済組合があります。
ここでは加入者の多い『協会けんぽ』を例として紹介します。
収入の基準
被保険者と同一の世帯の場合
年間収入が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金受給者は180万円未満)で、
かつ被保険者の年間収入の2分の1未満であること
被保険者と同一の世帯ではない場合
年間収入が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金受給者は180万円未満)で、
かつ被保険者からの仕送りより少ないこと
年収130万円とは年間の見込み収入で認定されます。
月々の収入べースで判断されるため、月給に換算して10万8,333円未満が扶養対象者となります。
収入とは、継続して得られる収入を指します。
給与収入や事業収入、その他失業給付や公的年金、傷病手当金、育児休業給付金、出産手当金なども含まれます。
交通費や通勤手当も収入に含めて計算します。
一方、出産育児一時金や一括で受け取る退職金などの一時的な収入は含まれません。
被扶養者の範囲
- 被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
(※同居の必要はない) - 被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。- ① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
- ② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
- ③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除く。
参考:被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
税法上の配偶者は婚姻関係にある人に限定されますが、社会保険上の配偶者は、内縁関係の人も含まれます。



ただし被扶養者となっても、
出産手当金や傷病手当金など一部の給付は受けられません。
厚生年金保険
厚生年金保険とは20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金とは別に、会社員や公務員が加入する年金制度です。
国民年金に上乗せして、将来受け取ることができます。



よく聞く2階建ての2階部分に当たります!
年金の被扶養者になれるのは、第2号被保険者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者のみです。
税金や健康保険と違い、配偶者以外の親族は対象外です。
収入が130万円未満であることも条件となります。
扶養される配偶者は保険料の支払いなしで、第3号被保険者となり、国民年金のみに加入となります。
国民年金の被保険者は3種類に分けられます。
第1号被保険者 | 自営業者や学生 【年齢】20歳以上60歳未満 |
第2号被保険者 | 会社員や公務員 (厚生年金保険に加入している人) 【年齢】要件なし |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている配偶者 【年齢】20歳以上60歳未満 |
社会保険の加入条件
被扶養者は一定の条件を満たすと、社会保険上の扶養から外れ、自分で勤務先の社会保険に加入する必要があります。
週の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、フルタイムの4分の3以上であれば、社会保険の加入対象となります。
この場合、正社員であるかどうかは問いません。
また、上記を満たしていなくても、以下のすべてを満たす場合は社会保険への加入が必要です。
- 従業員数51人以上の企業
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない



月額8.8万円×12ヶ月=1,056,000円なので年間収入106万円未満が扶養の対象となります!
※月額8万8,000円以上かどうかは通勤手当・交通費や残業代、ボーナスなどを含めない金額で判定します。
- 保険料負担が軽減される
- 社会保険料は勤務先と半分ずつ負担(国保の場合は全額負担)
- 年金制度が充実し、リスクに備えられる
- 厚生年金保険に加入することで、将来受け取る年金が増える。
- 障害年金や遺族年金を受け取ることができる。
- 健康保険に加入することで、休業中の保障も手厚くなる
- 傷病手当金や出産手当金を受け取ることができる。
- 雇用保険に加入することで、給付を受けられる
- 失業給付や育児休業給付などを受けられるようになる。
扶養から外れると、社会保険料の支払いが発生しますが、このようにメリットもたくさんあります。



もし働けなくなった時や、出産で休業する時にも収入があれば安心ですよね。
扶養に入るメリット・デメリット
メリット
- 扶養者の税金を減らすことができる
- 配偶者を扶養に入れる場合、配偶者控除や配偶者特別控除が受けられる
- 子どもや親を扶養に入れる場合、扶養控除を受けられる
- 扶養者は手当がもらえる場合がある
- 企業によっては、扶養手当がもらえる
- 被扶養者は社会保険料の負担なしで加入できる
- 健康保険や厚生年金保険の保険料を自分で支払う必要がない
デメリット
- 収入に制限ができる
- 一定額を超えてしまうと控除が受けられなくなる
- 保障の減少
- 傷病手当金や出産手当金は支給されない
- 将来受け取れる年金が減る
- 国民年金のみとなり、受給額が減る



メリットやデメリットを理解してライフプランを家族で話し合うことが大切ですね!
まとめ
今回の記事では扶養について解説しました。
扶養には税法上と社会保険上の2種類があり仕組みや対象も異なります。
2025年度より改正も予定されていますが、今後、扶養制度はさらに変わっていく可能性があります。
最新の情報を確認するようにしてください。
メリットやデメリットを理解して、家計や将来のことも考えながら働き方を家族で考えなければいけませんね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。