子育て中の家庭ではフルタイムで働くことが難しかったりしますよね。
扶養内で働く、もしくは検討された経験などはありませんか?
私自身約10年間会社員として働き、その間に結婚や出産、時短勤務も経験しました。
そして今回妊娠を機に退職し、夫の扶養に入ることにしましたが、扶養や控除についての知識はゼロでした。
毎年の年末調整も、ただ提出しているだけでしたので、きちんと理解しておこうと改めて勉強しました。
この記事では、私と同じような方にもわかりやすく、扶養に関する基本的なことを解説していきます!
※2024年3月現在の情報です。
扶養とは
そもそも扶養とは収入がない、あるいは少ない家族や親族に対して、経済的な援助をすることです。
扶養には2種類あります。
税金に関する控除が受けられる
《税法上の扶養》
社会保険に扶養として加入することができる
《社会保険上の扶養》
それぞれ解説していきますね!
税法上の扶養
税法上の扶養とは、所得税や住民税にかかわる控除の制度のことです。
納税者の配偶者や子ども、親などの年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入なら年間103万円以下)の場合に、一定の金額の所得控除が受けられます。
配偶者は《配偶者控除》子どもや親は《扶養控除》の対象となり、納税者の負担が軽減されます。
税額計算の基本
所得税・住民税は《課税所得》に税率を掛けて
算出します。
収入とは会社からもらう給与や賞与の合計額のことで、1年間(1月1日から12月31日まで)に得る
年収のことです。
手取り額ではなく、源泉徴収税額や社会保険料などが差し引かれる前の額のことをいいます。
個人事業主などの場合は、事業によって発生した売上金額がそのまま収入金額です。
会社員は収入に応じて決められた給与所得控除、個人事業主は必要経費を収入から差し引きます。
収入から、給与所得控除(必要経費)を差し引いたものが所得です。
必要経費とは、収入を得るために発生した支出のことです。
例えば家賃や光熱費、パソコンや携帯の購入費・通信費などがあります。
所得=収入ー給与所得控除(必要経費)
さらにその所得から、扶養控除や配偶者控除、医療費控除など各自の事情に応じて所得控除を行い、残った分が課税所得となります。
所得控除には15種類あります!
つまり所得控除を受け、課税所得を下げることが節税の基本となります!
控除は年に1回、扶養者が年末調整や確定申告で申告することにより受けることができます。
《扶養控除》や《配偶者控除》を受けるためには条件がありますのでそれぞれ解説していきます。
扶養控除
納税者に控除対象扶養親族(子どもや親、親族など)がいる場合に、一定の金額の所得控除が受けられます。
その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の
扶養親族がいる場合に適用されます。
16歳未満の扶養親族については、児童手当の対象なので、扶養控除の対象外になっています。
扶養親族
扶養親族とは、その年の12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
※引用 国税庁「No.1180 扶養控除」
配偶者は扶養親族には含まれません。
そのため《配偶者控除》または《配偶者特別控除》の対象となります。
扶養する人を『扶養者』
扶養される人を『被扶養者』と呼びます。
被扶養者の年間の合計所得金額が48万円または
給与収入が103万円を超えると、扶養控除の対象から外れます。
扶養者は扶養控除を受けられなくなり、被扶養者本人も所得税を納めなければなりません。
これがいわゆる103万の壁と呼ばれるものですね!
給与収入の場合《給与所得控除》として
55万円は所得から控除されるため、
所得が48万円=給与の収入が103万円と
なります!
扶養控除の金額
扶養親族の年齢によって異なり、次のとおりです。
- 一般の控除対象扶養親族
(扶養親族で16歳以上):38万円 - 特定扶養親族
(扶養親族で19歳以上23歳未満):63万円 - 老人扶養親族
(扶養親族で70歳以上):48万円または58万円
※老人扶養親族のうち同居老親等の場合58万円で
それ以外が48万円になります。
配偶者控除
納税者に控除対象配偶者がいる場合に、一定の金額の所得控除が受けられます。
ただし、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられません。
控除対象配偶者
その年の12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。
- 民法の規定による配偶者であること。
(内縁関係の人は該当しません) - 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
※引用 国税庁「No.1191 配偶者控除」
被扶養者(配偶者)の年間の合計所得金額が48万円または給与収入が103万円を超えると、配偶者控除の対象から外れます。
たとえば私が夫の扶養に入り働く場合、給与収入が103万を超えないように調整すれば、私は所得税を支払う必要がなく、夫も控除が受けられるということですね!
ただし、配偶者控除の対象から外れても所得金額に応じて《配偶者特別控除》が受けられます。
配偶者控除の金額
納税者本人の合計所得金額によって異なります。
納税者本人の合計所得金額 | 一般の控除 対象配偶者の 控除額 | 老人控除 対象配偶者の控除額 |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
※老人控除対象配偶者とは12月31日現在の年齢が70歳以上の人のことです。
配偶者特別控除
配偶者に48万円を超える所得(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)があり、配偶者控除が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて一定の金額の所得控除が受けられます。
つまり配偶者控除の対象から外れても、控除額が一気にゼロになるわけではなく、段階的に減っていくということです。
配偶者特別控除を受ける条件
- 控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること。
- 配偶者が、次の要件すべてに当てはまること。
- 民法の規定による配偶者であること
(内縁関係の人は該当しません)。 - 控除を受ける人と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円超133万円以下であること。
- その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
- 民法の規定による配偶者であること
- 配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと。
- 配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書または従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと。
(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く。) - 配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと。
(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く。)
※引用 国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
配偶者特別控除の金額
配偶者の所得金額に応じて段階的に減っていき、133万円を超えると控除はなくなります。
納税者本人の合計所得金額 | ||||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 | ||
配 偶 者 の 合 計 所 得 金 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養とは、社会保険に加入できる制度のことです。
被扶養者は、保険料を自分で支払わずに扶養者が加入する社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入することができます。
個人事業主などが加入する国民健康保険には、
扶養の概念がありません。
社会保険とは、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の総称のことです!
社会保険の被扶養者になる条件は、健康保険と厚生年金保険によって異なりますのでそれぞれみていきます。
健康保険
健康保険とは会社員や公務員が加入する
公的医療保険です。
公的医療保険には3種類あります。
- 健康保険(会社員・公務員)
- 国民健康保険(個人事業主など)
- 後期高齢者医療制度(75歳以上の人)
医療保険に加入し、保険証を持っていれば医療機関を受診した際の窓口負担が、かかった医療費の一部で済みます。
子どもの頃は扶養されていたので、保険料を自分で支払わなくても健康保険証を持ち、療養の給付を受けられましたよね!
被扶養者として認定されるには、収入の基準と
被扶養者の範囲を満たしていることが条件となります。
※健康保険の運営主体には協会けんぽと健康保険組合、共済組合があります。
ここでは加入者の多い『協会けんぽ』を例として紹介します。
収入の基準
【被保険者と同一の世帯の場合】
年間収入が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金受給者は180万円未満)で、
かつ被保険者の年間収入の2分の1未満である場合
【被保険者と同一の世帯ではない場合】
年間収入が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金受給者は180万円未満)で、
かつ被保険者からの仕送りより少ない場合
年収130万円とは年間の見込み収入で認定されます。
月々の収入べースで判断されるため、月給に換算して10万8,333円未満が扶養対象者となります。
また収入とは、継続して得られる収入を指します。
給与収入や事業収入、その他失業給付や公的年金、傷病手当金、育児休業給付金、出産手当金なども含まれます。
交通費や通勤手当も収入に含んで計算します。
反対に、出産育児一時金や一括で受け取る退職金などの一時的な収入は含まれません。
被扶養者の範囲
- 被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
(※同居の必要はない) - 被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
- ① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
- ② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
- ③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
※同一の世帯とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。
※後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます。
税法上の配偶者は婚姻関係にある人に限定されますが、社会保険上の配偶者は、事実上婚姻関係と同様の人も含まれます。
ただし被扶養者となっても、
出産手当金や傷病手当金など
一部の給付は受けられません。
厚生年金保険
厚生年金保険とは20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金とは別に、会社員や公務員が加入する年金の制度です。
国民年金に上乗せし、将来受け取ることができます。
よく聞く2階建ての2階部分に当たります!
年金の被扶養者になれるのは、第2号被保険者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者のみです。
税金や健康保険と違い、配偶者以外の親族は対象外です。
収入が130万円未満であることも条件となります。
扶養される配偶者は保険料の支払いなしで、第3号被保険者となり、国民年金のみの加入となります。
国民年金の被保険者は3種類に分けられます。
第1号被保険者 | 自営業者や学生 【年齢】20歳以上60歳未満 |
第2号被保険者 | 会社員や公務員 (厚生年金保険に加入している人) 【年齢】要件なし |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている配偶者 【年齢】20歳以上60歳未満 |
社会保険の加入条件
被扶養者は一定の条件を満たすと、社会保険上の扶養から外れ、自分で勤務先の社会保険への加入が必要となります。
週の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、フルタイムの4分の3以上であれば、社会保険の加入対象となります。
この場合、正社員か否かは問いません。
また、上記を満たしていなくても、以下のすべてを満たす場合は社会保険への加入が必要です。
- 従業員数101人以上の企業
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
※2024年10月に「従業員数51人以上」の
企業まで拡大されます。
月額8.8万円×12ヶ月=1,056,000円なので年間収入106万円未満が扶養の対象となります!
また月額8万8,000円以上かどうかは通勤手当・交通費や残業代、ボーナスなどを含めない金額で判定します。
年収の壁まとめ
〇〇万円の壁と呼ばれる年収の壁には、税金と社会保険に関わるものがあります。
一定の収入を超えると扶養から外れます。
扶養者は控除を受けられなくなったり、被扶養者本人にも税金や社会保険料の支払いが発生し、手取り額が減ることがあります。
それぞれの壁について解説していきます。
103万円の壁【税金】
年収が103万円を超えると、配偶者控除または扶養控除の対象から外れます。
配偶者の場合は、配偶者特別控除に切り替わり、年収150万円までは控除が受けられます。
扶養者は控除を受けられなくなると、その分納める税金が増えることになります。
また収入が103万円を超えると、超えた額に対して所得税がかかり、働いている本人に所得税の支払いが発生します。
例えばパートやアルバイトの収入が110万円の場合は、103万円を超えた7万円が課税所得となります。
7万円に所得税率5%を掛けた3,500円が所得税となり、手取りから減ることになります。
所得税は累進課税という仕組みで、課税所得が多いほど税率が高くなります。
106万円の壁【社会保険】
年収が106万円を超えると、社会保険の扶養から外れ、自分で勤務先の社会保険に加入が必要なケースがあります。
※条件については社会保険の加入条件で解説しています。
社会保険料が発生することで、かえって手取りが減ることがあります。
ですが社会保険に加入することで、将来もらえる年金が増えたり、傷病手当金や出産手当金を受給できるようになるなどのメリットもあります。
130万円の壁【社会保険】
年収が130万円を超えると、社会保険の扶養から外れます。
自分で勤務先の社会保険もしくは、国民健康保険・国民年金に加入しなければなりません。
年収130万円は見込み収入で認定されるため、130万円未満にするためには月収10万8,333円までが目安です。
年収の壁・支援強化パッケージ
現在106万円・130万円の壁に対して壁を意識せず働ける環境づくりのための施策があります。
《106万円の壁》手取り収入を減らさないように取り組む企業に対して、労働者1人あたり最大50万円の助成金
《130万円の壁》繁忙期に労働時間を延ばすなどして一時的に収入が上がり130万円を超えたとしても、事業主の証明により、引き続き扶養に入り続けることが可能となる仕組み
これらが適用されるかは勤務先の企業に確認が必要です。
※年収の壁・支援強化パッケージは次の年金制度改正までの措置で、2025年末までです。
150万円の壁【税金】
年収150万円は配偶者特別控除の満額を受けられる上限額です。
控除額を満額にするためには年収を150万円以下に抑える必要があります。
配偶者特別控除は段階的に金額が減少していきます。
年収が201万円を超えると、配偶者特別控除は適用されなくなります。
扶養に入るメリット・デメリット
メリット
税法上
扶養控除や配偶者控除を受けることで、扶養者の税負担を減らすことができます。
また、企業によっては扶養手当がもらえる場合もあります。
被扶養者は収入が103万円以下であれば所得税の支払いがありません。
社会保険上
被扶養者は社会保険料の負担なしで社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入できます。
それによって扶養者の社会保険料が増えることはありません。
デメリット
税法上・社会保険上の扶養となる共通のデメリットは、収入に制限ができることです。
扶養内に抑える場合は、働きたくても時間を増やせず、世帯収入を増やすことが難しいです。
また社会保険上では、給付には制限があります。
被扶養者には、傷病手当金や出産手当金は支給されませんので、働けなくなった場合の保証がなくなります。
年金については第3号被保険者となり、将来受けとれる金額が少なくなります。
まとめ
今回の記事では扶養について解説しました。
扶養とは家族や親族に対して経済的な援助を行うことです。
扶養には税法上と社会保険上の2種類があり仕組みや対象も異なります。
扶養者は税金に関する控除が受けられたり、被扶養者は社会保険に加入することができます。
扶養となる場合には被扶養者の収入が関係してきます。
今後、扶養制度はさらに変わっていく可能性があります。
メリットやデメリットを理解して、家計や将来のことも考えながら働き方を選択しなければいけません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。