「扶養」という言葉、ママなら一度は耳にしたことがありますよね。
でも、「なんとなくしか分からない…」という方も多いのではないでしょうか?
私自身も、妊娠を機に仕事を辞め、夫の扶養に入るまで、その仕組みや意味はまったく分かっていませんでした。
この記事では、私と同じようなママに向けて、扶養の基礎をわかりやすく解説していきます。
2025年(令和7年)12月1日から、所得税に関する制度が一部改正され、「基礎控除」や「給与所得控除」の見直し、「特定親族特別控除」の新設などが行われます。
今回の記事では、現行制度をもとにした「扶養の基礎知識」を中心に解説しています。
最新の内容については、国税庁の公式サイト等でご確認ください。
扶養とは?
扶養とは、収入がない・または少ない家族を経済的に支援することをいいます。
主に以下の2つに分類されます。
- 税法上の扶養
- 税金に関する控除が受けられる
- 社会保険上の扶養
- 社会保険に扶養として加入できる

では、それぞれわかりやすく解説していきますね!
税法上の扶養
税法上の扶養とは、一定の条件を満たした家族がいると、所得税や住民税の負担が軽くなる制度です。
たとえば、年間の合計所得が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)の配偶者や子ども、親などがいる場合、所得控除を受けることができます。



大まかに言うと一定の条件を満たす家族を、養っている人の税金が安くなる制度です!
- 子どもや親:扶養控除
- 配偶者:配偶者控除・配偶者特別控除
この控除によって、納める税金が安くなります。
所得税・住民税の計算の仕組み



まず、「税金ってどうやって計算されるの?」というところから、説明していきます!
所得税や住民税は、ざっくり言うと以下の流れで決まります。
会社員:給料やボーナスなど、1年間の「総支給額(年収)」のこと。手取りではなく、社会保険料などを引かれる前の金額です。
個人事業主:売上金額が「収入」として扱われます。
会社員:収入から給与所得控除を差し引いたもの。給与所得控除は、収入に応じて決められています。
個人事業主:収入から必要経費(家賃・光熱費など)を差し引いたもの。
所得から「扶養控除」「配偶者控除」などの所得控除を差し引きます。
残った金額(課税所得)に、税率をかけて税額が決まります!



控除が多ければ多いほど、課税される金額が少なくなり、結果的に税金が安くなる仕組みです!
所得控除にはたくさんの種類があり、年末調整や確定申告で申請することで適用されます。
扶養控除とは?
扶養控除とは、子どもや親などを扶養している人の税金が安くなる制度です。
対象になる扶養親族
控除の対象となるのは、その年の12月31日時点で16歳以上の家族です。



16歳未満の子どもは対象外です。その代わりに、「児童手当」などの制度でサポートされています。
扶養控除の対象になる人(=扶養親族)は、以下のすべての条件を満たしている必要があります。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族・3親等内の姻族)、または都道府県や市町村から委託されている児童・老人など
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の所得が48万円以下であること
(給与収入のみなら103万円以下) - 青色申告の事業専従者として給与をもらっていない、または白色申告の事業専従者でないこと
「103万円の壁」って?



扶養に入っているお子さんが、アルバイトなどで給与をもらっている場合を考えてみます。
給与の場合、「給与所得控除」として55万円が自動的に差し引かれます。
つまり、収入が103万円までであれば…
103万円- 55万円= 48万円
となり、所得が48万円以下という条件をクリアするので、扶養控除の対象になります。
でも、収入が103万円を超えてしまうと…
- 所得が48万円を超える
- 扶養者は扶養控除が使えなくなる(=税金が増える)
- 扶養されていたお子さんも、所得税を納める必要が出てくる



これがいわゆる「103万円の壁」と呼ばれる理由です。
扶養控除の金額
扶養控除でどのくらい税金が安くなるのか、気になりますよね。
扶養親族の年齢などによって、控除される金額が変わります。
対象 | 控除額 |
---|---|
一般の扶養親族 (16歳以上) | 38万円 |
特定扶養親族 (19歳以上23歳未満) | 63万円 |
老人扶養親族 (70歳以上) | 48万円または58万円 ※同居している場合は58万円、それ以外は48万円。 |
配偶者控除とは?
配偶者控除とは、専業主婦(主夫)などの配偶者を扶養している人の税金が安くなる制度です。
ただし、扶養する側(=納税者本人)の所得が1,000万円を超えると、配偶者控除は使えません。
対象となる配偶者
その年の12月31日時点で、次の4つすべてに当てはまる人が対象です。
- 民法上の配偶者であること(内縁関係は対象外)
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の所得が48万円以下であること
(給与収入のみなら103万円以下) - 青色申告の事業専従者として給与をもらっていない、または白色申告の事業専従者でないこと



ここでも「103万円の壁」が出てきます!
たとえば、私が夫の扶養に入ってパートで働いているとします。
私の収入が103万円を超えると、配偶者控除の対象から外れ、自分で所得税を納める必要が出てきます。
ですが、収入が103万円を超えても、「配偶者特別控除」という制度があります。次で説明します。
配偶者控除の金額
配偶者控除でいくら税金が安くなるかは、納税者本人(=扶養する側)の年収によって異なります。
納税者の所得 | 一般の配偶者 (70歳未満) | 老人配偶者(70歳以上) |
---|---|---|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
配偶者特別控除とは?
配偶者特別控除とは、配偶者の収入が103万円を超えた場合でも、段階的に税金が安くなる制度です。



つまり、配偶者控除が使えなくても、いきなりゼロにはならず、配偶者特別控除が受けられる可能性があるということですね!
控除額は、配偶者の所得と扶養する側の所得によって変わります。
配偶者特別控除の条件
配偶者特別控除を受けるには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 納税者本人の所得が1,000万円以下
- 民法上の配偶者である(内縁関係は対象外)
- 納税者と生計を一にしている
- 年間の所得が48万円超~133万円以下(給与収入なら103万円超~201万円以下)
- 青色申告の事業専従者として給与をもらっていない、または白色申告の事業専従者でないこと
- 他の人の「源泉控除対象配偶者」になっていない



配偶者特別控除は夫婦のうち、どちらか1人しか使えません。
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養とは、一定の条件を満たす家族を「被扶養者」として、扶養者の社会保険に加入させる制度です。



被扶養者になると、自分で保険料を払わなくても、健康保険や年金などを利用できるようになります。
国民健康保険には「扶養」という考え方はありません。
世帯ごとに加入する仕組みで、世帯主が保険料を支払い、家族もその保険に入る形になります。
「社会保険」とは、次の5つの保険制度の総称です。
- 医療保険(健康保険など)
- 年金保険(厚生年金など)
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
このうち、扶養の制度があるのは、「健康保険」と「厚生年金保険」です。
健康保険とは?
健康保険は、会社員や公務員が加入している公的な医療保険のことです。
公的医療保険には次の3つがあります。
- 健康保険(会社員・公務員など)
- 国民健康保険(個人事業主など)
- 後期高齢者医療制度(75歳以上の人)
保険に入っていて保険証を持っていれば、病院での支払いが医療費の一部だけで済む仕組みになっています。



子どものころに家族の保険証を使っていた方も多いですよね。あれは「被扶養者」として保険に入っていたからです。
この「被扶養者」になるには、収入や家族の関係など一定の条件があります。
※健康保険の運営主体には協会けんぽと健康保険組合、共済組合があります。ここでは加入者の多い『協会けんぽ』を例として紹介します。
被扶養者として認められる収入の目安
年間収入130万円未満
(=月収10万8,333円未満)
※60歳以上または障害厚生年金の受給者は180万円未満



年収130万円は「見込み収入」で判断されるので、月収ベースでは月10万8,333円未満が目安になります。
さらに以下の条件も必要です。
- 同一世帯の場合:被保険者の収入の1/2未満であること
- 別世帯の場合:被保険者からの仕送りより収入が少ないこと
収入に含まれるもの(継続的な収入)
- 給与・事業収入
- 雇用保険の失業手当
- 公的年金
- 傷病手当金
- 育児休業給付金、出産手当金
- 交通費通勤手当 など
収入に含まれないもの(一時的な収入)
- 出産育児一時金
- 退職金 など
被扶養者として認められる人の範囲
【1】同居していなくても扶養に入れる人
以下の人は、被保険者に生計を維持されていれば、同居の必要はありません。
- 被保険者の直系尊属(両親・祖父母など)
- 配偶者(※事実婚の人も含む)
- 子・孫
- 兄弟姉妹
【2】同一世帯でないと扶養に入れない人
以下の人は、同居して、被保険者により生計を維持されていることが条件です。
- 被保険者の三親等以内の親族(上記【1】を除く)
- 内縁の配偶者の父母・子
- 内縁の配偶者が亡くなった後の父母・子
ポイント
- 税法上と社会保険上の「配偶者」の違い
- 税法では婚姻関係にある人のみ対象。
- 社会保険では事実婚の相手も配偶者に含まれる。
- 被扶養者になっても受けられない給付もある
- 出産手当金や傷病手当金などは対象外。
厚生年金保険とは?
厚生年金保険は、会社員や公務員が加入する公的年金制度です。
20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金に上乗せされる形で加入します。



日本の年金制度は2階建ての建物に例えられます。1階部分が「国民年金」2階部分が「厚生年金」という仕組みです!
年金の「扶養」に入れるのは配偶者だけ
年金制度で「被扶養者」として認められるのは、第2号被保険者(会社員・公務員)に扶養されている配偶者のみです。
- 対象年齢:20歳以上60歳未満
- 収入条件:年収130万円未満、かつ配偶者の年収の2分の1未満
- 親や子など配偶者以外の家族は対象外
厚生年金に加入している配偶者に扶養されていると「第3号被保険者」となります。
- 保険料の支払いは不要
- 国民年金に自動的に加入される



この期間も、国民年金の加入期間としてカウントされます。
国民年金の被保険者は以下の3種類に分けられます。
第1号被保険者 | 自営業者や学生など (20歳以上60歳未満) |
第2号被保険者 | 会社員や公務員 (厚生年金保険に加入している人) |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている配偶者 (20歳以上60歳未満) |
社会保険の加入条件
パートやアルバイトで働いていても、一定の条件を満たすと、社会保険上の扶養から外れて、自分自身で社会保険に加入する必要があります。
以下のすべての条件に当てはまると、社会保険に加入することになります。
- 従業員数51人以上の企業で働いている
- 1週間の働く時間が20時間以上
- 1ヶ月の給料が8.8万円以上
- 2か月を超える雇用見込みがある
- 学生ではない



月額賃金8.8万円は「基本給+固定手当」で判断されます!交通費や残業代、ボーナスなどは含まれません!
- 保険料負担が軽減される
- 社会保険料は勤務先と半分ずつ負担(国保の場合は全額負担)
- 年金制度が充実、リスクに備えられる
- 厚生年金保険に加入することで、将来受け取る年金が増える。
- 障害年金や遺族年金を受け取ることができる。
- 休業中の手当がもらえる
- 傷病手当金や出産手当金を受け取ることができる。
- 雇用保険の給付も受けられる
- 失業給付や育児休業給付などを受けられるようになる。
扶養から外れると保険料の負担は増えますが、将来への備えや休業時の安心が手に入るのは大きなメリットです。



もし病気などで働けなくなった時や、出産で休業する時にも収入があればママにとっては安心ですよね。
扶養に入るメリット・デメリット
結婚・出産・育児とライフステージが変わる中で、「扶養に入る or 入らない」は大きな選択のひとつですよね。
それぞれのメリット・デメリットを知って、家族で話し合うことが大切です。
メリット
① 扶養者の税金が安くなる
配偶者や子ども、親などを扶養に入れることで、所得税や住民税の負担が軽減されます。
② 企業から手当がもらえることも
勤務先によっては、「扶養手当」「家族手当」などが支給される場合があります。金額や対象者は企業によって異なるので、確認してみてください。
③ 社会保険料を支払わなくていい
被扶養者になると、健康保険や年金保険の保険料を支払う必要がありません。
デメリット
①収入に上限がある
税制や社会保険の扶養に入るには、収入が一定額以下であることが条件です。
収入が増えると扶養から外れ、税金や保険料の負担が発生します。
② 保障が受けられないものもある
被扶養者は、給付金などの保障が制限されます。出産手当金や傷病手当金は対象外です。
③ 将来の年金が少なくなる
被扶養配偶者(第3号被保険者)は、国民年金のみに加入する仕組みです。
そのため、会社員や公務員のように厚生年金がつかず、将来の年金額が少なくなります。
まとめ
今回の記事では扶養の基礎知識をわかりやすく解説しました。
扶養には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があり、それぞれ仕組みや条件が異なります。
ママになると、働き方や家計のこと、家族との時間など、いろいろと考えることが増えますよね。



私自身も今まさにどうしていくか悩み中です。
「扶養に入る?」「それとも抜ける?」と迷ったときに、今回の記事が少しでもヒントになればうれしいです。
※2025年12月から税制の一部改正が予定されています。この記事では現行制度をもとに解説しています。詳しくは国税庁のHPなどで最新情報をご確認ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。